安全大会を機に考えたい、建設業界の女性活用。察する力の強い女性たちが、もっと活躍できる現場へ

こんにちは、前川由希子です。

私は組織活性化コンサルタントとして多くの企業の人材育成や組織活性化のための研修を担当していますが、力を入れている領域の1つに建設業界の業界支援・女性活躍支援があります。

建設業は女性活用において伸びしろのある業界だと感じています。国土交通省の2017年建設業活用実態調査では、女性が占める割合は大手不動産会社の事務職で36.8%。技術者は15年間で約3倍に伸びたものの、それでも4.8%です。もっと活躍できそうだと思いませんか?

安全大会は、女性の強みをどう現場に活かせるか、そのために何が必要なのかを考えるよい機会となります。そこで、今回は建設業界における女性たちの活躍例や、企業側が取り組みたいことについてお話しします。


■「女性だからできないこと」はごくわずか。女性たちの気づきや発想を建設に活かす

これまで、力仕事が多い建設業は、比較的体力のある男性の仕事というイメージがありましたが、近年は機械化が進み力を必要とする仕事は減ってきています。車や機械などの操作であれば体力のあるなしは関係なくできますよね。男性にしかできないことが、今どれだけあるでしょうか。

意見やアイディアを出すことも、誰もができること。たとえば、私が所属している、ある建築業関連団体の理事は全員が男性ですが、女性である私の意見は視点の違う新鮮なものとして、役立てていると感じています。

建築現場でも同様です。私の関わったことのある企業さまに、住宅や店舗の設計・施工を行っている社員8名の会社があります。8名中6名が女性で、細やかな気づきや独自の発想を活かしています。

たとえば、住宅設計の場合。女性の建築士さんは、ご自身も家庭で妻や母親という役割をこなしており、日常のさまざまな場面で家事動線や収納など「〇〇だったらもっと便利になりそう」という気づきがあります。それを形にし、より快適に暮らせる住宅を実現しているのです。

住まい選びにおいて、細かな部分を調べ、水まわりなどの仕様を決めるのは女性が多いという傾向もあります。同じ女性としてお客様に寄り添ったものづくりが支持を集めているといえるでしょう。


■明るく、活気ある職場へ。女性がいることでおこる、建設現場の変化

女性が建設業界に入ることで、職場内でも変化がおきます。特に「◯◯をしましょう」と呼びかけたわけではないのに自然に、雰囲気がよりよくなるというのです。少し不思議かもしれませんが、これは色々なことの積み重ねです。

さきほどの社員8名中6名が女性の会社の事例をご紹介します。

職人さんの中には女性と働くことに慣れておらず、最初は心理的に距離を感じる方もいます。しかし、現場で女性ならではの高い声が聞こえるとなんとなく雰囲気が明るくなり、空気も和みやすくなります。

事務所や現場の環境も、よりよくなるということです。細やかな部分に気づき、道具を使いやすいように置き場所を整頓したり、トイレを清潔にする取り組みをしたりと工夫をする人がいると、それを見たほかの人にも「私もきれいにしよう」という意識が生まれるのです。

こうした変化とともに、最初は距離があった職人さんたちが積極的に手助けし、知らない作業について教えてくれるといった場面がだんだん増えていくようです。これは新しく働き始めた人や女性に対してだけでなく、以前から働いていた方も含めて、職場全体が協力し合う空気になっていくのです。

また、建設現場の近隣の方との関係づくりにも女性は強みを発揮します。近くで工事があると、作業者や車の出入り、重機の音などが発生し、周辺で暮らす方はネガティブな感情になりがちです。

そんなとき、日頃のコミュニケーションを重視する女性が現場にいると、自然と近隣の方との挨拶やなにげない世間話が増えていきます。そして、そこでできたよい関係は、実は建物の完成後にも影響します。工事中によい印象があると、施主の方が入居、あるいはお店を開店したときなどにも、近隣の方と良好な関係を構築しやすくなるのです。


■建設業にマッチする女性を増やすために。先入観なく活発なコミュニケーションを

建築業界が、女性たちにとってもっと働きやすくなるために、いくつか考えたいことがあります。たとえば、職場環境のちょっとした工夫。現場事務所の広さは限られていて、トイレや着替え場所などが性別で分けられない、といったこともあります。スペースを増やすのは難しいですが、カーテンをつけるなど小さな配慮があると、それだけで嬉しいものです。

女性の数を増やすためには、求人への応募者を増やすことも重要な課題ですね。しかし、まだまだ「私には向いていない」「女性は〇〇が苦手なのでは」という先入観が、女性自身にも、雇用する企業側にもあるように思います。思いこみで可能性をせばめるのはもったいないこと。建設業で働くことを考えたことはないけれど、実は向いている人も大勢いるのではないでしょうか。

マイナスの先入観をなくすため、まずは、建設業について知ってもらうことが大切です。今はインターネットなどで簡単に情報発信ができる時代。どんな職種があり、どのような仕事があるのか、実際に働いているスタッフの声や現場の様子などを伝え、安心感を与えましょう。

今働いている女性とも、コミュニケーションを大切にしましょう。上記であげたような、職場環境を快適にするための工夫や、どんな情報発信があるとよいか、など話してみると新しい発見がありそうです。

普段は忙しく、このようなことを考えるのは難しいかもしれません。そこで、現場を離れ、さまざまな立場の方が集まる安全大会がよい機会となります。みなさんの職場ではどのように女性活用をしているか、これからどんな可能性があるか、ぜひお話してみてください。

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