ESは現場でつくられる。上司力が企業の生産性と定着率を左右する、次世代リーダーシップの要点
こんにちは、前川由希子です。
私はこれまで、脳科学・行動科学・心理学の知見を取り入れながら、組織活性化や人材育成の支援を行ってきました。ありがたいことに、研修や伴走支援のリピート率は9割を超え、10年以上にわたり継続的にご一緒している企業様も少なくありません。
近年、経営者や人事責任者の方から、次のような声を多く耳にします。
・ES(従業員満足度)を上げたいが、施策に割ける余裕がない
・若手が定着しない
・管理職が疲弊している
しかしESは、制度や予算をかけなければ上がらないものではありません。
実際には、現場の上司の関わり方ひとつで、ESは大きく変わります。
本記事では、2026年の組織環境を前提に、
「経営成果につながるES向上のための“上司力”」についてお伝えします。
■ESは「満足度」ではなく「組織パフォーマンスの土台」である
多様な働き方や価値観が当たり前になった現在、「全員に同じマネジメント」は、もはや機能しません。
かつての上司力が
「統率し、指示し、同じ方向を向かせる力」
だったとすれば、今求められているのは、
「個の違いを理解し、活かしたうえで成果を出す力」
です。
社員はそれぞれ、
・キャリア志向が強い人
・人との関係性にやりがいを感じる人
・専門性やスキルの深化を重視する人
と、動機づけが異なります。
この違いを無視したマネジメントは、
指示待ち・モチベーション低下・離職につながります。
逆に言えば、
個の価値観と業務をうまく接続できたとき、ESは自然と高まるのです。
■ESを高める上司は「采配」がうまい
例えば、3人の部下がいるとします。
・昇進や評価を重視するAさん
・社内外の人と関わることに喜びを感じるBさん
・スキル習得や成長を最優先に考えるCさん
この3人に同じ役割を与えることが、果たして最善でしょうか。
プロジェクトを任せる際、
・Aさんには経営層や他部署と関わる役割
・Bさんには社外対応や調整業務
・Cさんには少し背伸びした全体管理や設計
といったように、動機に合った役割を与えることは、成果とESを同時に高める合理的な采配です。
すべてを希望通りにする必要はありません。
しかし、会社の方向性と個人の動機が重なる部分を意識するだけで、
社員の「腹落ち感」は大きく変わります。
■「任せられない上司」がESを下げる
ES向上に取り組みたいが時間がない、という管理職の方には、
まず業務の棚卸しをおすすめしています。
上司がやるべき仕事と、
部下に任せることで育成につながる仕事を分けるのです。
仕事を任されることで、
・責任感が生まれる
・判断力が育つ
・成長実感を得られる
このプロセスなしに、ESは上がりません。
ただし、任せっぱなしは逆効果です。
上司に求められるのは、次の2点です。
■①「話せる関係」をつくることは、リスクマネジメント
大きなミスやトラブルの多くは、
小さな違和感が共有されなかった結果として起こります。
そのためには、日常のコミュニケーションが重要です。
例えば、挨拶ひとつでも、
「おはよう」ではなく、「おはよう、◯◯さん」
名前を呼ぶだけで、相手は「見られている」「認識されている」と感じます。
これは心理学的にも、信頼関係構築に効果がある行動です。
こうした積み重ねが、「何かあったら相談できる関係」=事故・離職の予防線になります。
■②「叱ること」はESを下げない。むしろ上げる
多くの管理職が誤解しているのが、「叱るとESが下がる」という考えです。
叱るとは、感情をぶつけることではありません。
「次はできるようになると期待している」と伝える行為です。
ここでも重要なのは、個への理解です。
・期待されると一気に伸びるタイプ
・小さな成功体験を積み重ねたいタイプ
成長のスピードは人それぞれです。
適切な期待値を示し、
「今どこにいて、次はどこを目指すのか」を明確にすることが、
ESと成果を両立させます。
■ESを左右するのは「圧倒的な観察力」
私の研修では、管理職の方に
「圧倒的な観察力を持ってください」とお伝えしています。
これは、監視ではありません。
欠点ではなく、価値を見つけにいく姿勢です。
管理職はどうしても、
・足りない点
・改善点
に目が向きがちです。
しかし、人は
「頑張っていることが見られていない」と感じた瞬間に、
パフォーマンスを落とします。
資料が分かりやすかった
メール対応が丁寧だった
顧客への配慮が行き届いていた
こうした小さな価値を言語化し、伝えることで、
社員は無駄な不安にエネルギーを奪われず、仕事に集中できます。
■ESは「上司の無意識の行動」で決まる
ES(従業員満足度)は、
福利厚生や制度よりも、
日々の上司の関わり方によって左右される指標です。
・自分は見られているか
・成長を期待されているか
・組織に貢献している実感があるか
これらが満たされたとき、人は自然と力を発揮します。
経営者の皆さまにとって重要なのは、
ES向上を「現場任せ」にせず、上司力として言語化し、育てることです。
それが結果として、
・生産性向上
・離職率低下
・次世代リーダー育成
につながっていきます。
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